myimage-nomal雑誌週刊文春に連載されている「阿川佐和子のこの人に会いたい」に、作家の恩田陸さんと阿川さんの対談記事がありました。
 
恩田さんはピアノコンクールを舞台にした「蜜蜂と遠雷」で直木賞を受賞しています。
 
恩田さんはこの作品のため、浜松国際ピアノコンクールを四回取材されています。そこで気づいたことがあるそうで・・・

とても興味深い内容だったので以下に紹介します。
(以下、週刊文春2017年3月9日124~125ページより抜粋しています)

聴いた時とCDでの印象の違い

阿川 コンクールを四回もご覧になると、回を重ねるごとに気づくことって変化していきますか?
 
恩田 はい。コンクールは二週間にわたって行われるんですが、四回とも新幹線に毎日のように乗ってほぼ通ったんですね。
 
だいたい一次予選に登場するのが90人、二次は24人になって三次は12人、本選は6人に絞られるんですが、最初に驚いたのは、お客さんに人気がある演奏と、審査員が選ぶ人の間にだいぶ・・・。
 
阿川 違いがあるんですか?
 
恩田 一致するときもあるんですけど、だいたい私の予想は外れます。
 
いまは出場者の演奏をすぐにCDに焼いて会場で購入できるんですけど、「あの人ドラマチックでよかった」と会場では思った演奏を家で聴き直すと、単調だったり一本調子だったりするんです。
 
逆に次の審査に残った人の演奏をCDで聴くと、やはりいいんですよ。だから、審査員ってすごいと思いますね。

一流ピアニストは楽器へのこだわりも強い

阿川 (「蜜蜂と遠雷」の登場人物)塵君の演奏は何が起こるかわからないですもんね。彼、作中で最適な音を出すためにピアノの位置をちょっとずらしたりしてましたけど、あのアイデアはどこから?
 
恩田 そういうピアニストが実際にいるんですよ。会場によっては椅子の材質も変えたりする人もいますし。
 
阿川 そんな人いるんだ!ピアノの場合、自分の楽器を持っていくわけにはいかないから、それ以外の部分を自分の好みに変えていくしかないんですかね。
 
恩田 それが、自分のピアノを持っていく人もいるんです。クリスチャン・ツィメルマンは世界のどこにでも自分のピアノを運びますよ。
 
阿川 ええー!?じゃ、調律師を指名したりなんてことも?
 
恩田 もちろん調律師は自分のお気に入りの人じゃないと嫌と言うピアニストが大勢いますよ。日本の調律師は優秀なので、ヨーロッパでも日本人調律師が活躍していることが多いです。

オーケストラの演奏者は楽器ごとに性格の違いがある?

阿川 オーケストラでもそうですけど、楽器ごとに演奏者の性格の特徴ってありません?
 
恩田 ありますよね~。オーボエ奏者の茂木大輔先生が「オーケストラ楽器別人間学」という本を出されてますけど、トランペットとトロンボーンとサックスってみな性格が違うんですよ。
 
阿川 どう違うんですか?
 
恩田 トランペットは、俺様って感じですね。俺がいちばんカッコいいだろうという、ちょっとナルシストが入った人が多い印象があります(笑)。それに対して、女の子の間では「トロンボーン奏者だよね」と、よく話題に上がっていました。
 
阿川 トロンボーンなんですか?なんで?
 
恩田 個性的ではじけたところもあるんだけど性格がいいんです。彼氏にするならトランペット、トロンボーンが旦那さんで、サックスはお友達で(笑)。