雑誌やネットには、たまに「釣りをしていて幽霊らしきものに出会った」といった恐怖体験が紹介してあります。
恐怖度レベルはかなり低いものの、肝を冷やした体験は私にもあります。
ちょっと長くなるので、ヒマな時にでも読んで頂ければ有難いです。
ちなみに私は霊感は全くありません。金縛りとか心霊写真とか、それらしい体験も皆無。
それでもあの時はキモを冷やしました。
夏のある日見つけた小さな野池
あれはもうかなり昔のこと。当時の私は車や自転車で野池巡りをやっていました。
書店で地図を購入して池を探し、人が少なそうな場所を探し回っていました。松橋周辺などは結構あちこちまわりました。
そしてその日は自転車で某大学近くの山を走っていました。季節は夏。
地図ではいくつかの池が確認できており、しかもバス釣具らしきものを持ったチビッ子軍団を以前目撃していました。(しかし結論から言うと、山を自転車で走り回るのは非常に辛く、あまり良い思いはできませんでした)
暑いし疲れたし、もう帰ろうかな・・・と思い始めた頃、かなり小さいがひとつため池を発見しました。
水深がかなり浅く見えて、バスがいるかどうかはかなり怪しい池でした。チビッ子が釣りをしていれば間違いなかったのですが、誰もいません。
心なしか雰囲気が寒々しい。
もう帰ろうかという気になっていたので、バスがいなくてもいいから何投かして切り上げよう、そう考えてその小さな池に下りました。
フェンスで囲いがしてありましたが、金網が一部破れていて、その隙間から池に降りるのは簡単でした。
ズズズッと2mほどすべって、池のふちに立ちました。
夕暮れが近かったせいか、池の大半は日陰になって、いかにも寒々しい雰囲気です。
ぐるっと見回してみても生命感が全く無く、こりゃだめだムードいっぱい。セミの声も聞こえません。
それでも「夕まずめということで釣れないかな?」と淡い期待を抱いてクランクを投げ始めました。
思いっきりキャストすると池の反対側までほとんど届きます。
そんな感じでフルキャストしては少し歩き、を15分くらい続けました。
釣り始めてしばらくは「やっぱり釣れないなあ」と、アタリのなさばかり気になっていたのですが、時間が経つにつれて
「・・・・・」
「・・・・・?」
「・・・・??」
「・・・何かヤバイ・・・」
と、別の何か異様な雰囲気を感じるようになってきました。
上で書いたように、私には霊感は全くありません。
にもかかわらずそう感じたのは、夕暮れ時の薄暗さのせいなのか、山独特の雰囲気がそうさせたのかは今となってはわかりません。
ざわざわっと木の葉を揺らす風も、なんとなく妖しさを含んでいます。
そういった雰囲気を感じて、基本的に小心者である私は、バスのことなど全く忘れて帰り支度を始めました。
もう撤収することしか頭にありません。
侵入したところとは別の場所からフェンスの外に出ました。
すると、ふと私の目に入るものがありました。池に到着した時には気付かなかったものです。
池を出て目にしたもの
私の目に入ったのは、いかにも手作りという風情の看板(貼り紙?)で、金網にくくりつけてありました。
その看板いわく・・・
「目撃者を探しています」
「○年○月○日、この池で起きた事故を目撃された方は・・・」
その看板を読んで、私はハタと思い当たりました。
当時、熊本のニュースでもかなり大きく扱われていた事故を。
「この池だったのか(冷汗)」
私が釣りをした池では人が死んでいたのです。
その事故とは、飲み会の帰りで酔っ払った学生が池に転落し、水死したというもの。
しかも私がニュースで見たところによると、単純な事故ではなく事件性もあるとかないとか。
釣りをしたその時点でも解決はしていませんでした。(だから看板があったのですが)そんな池で私は暢気に20分ほど釣りをしていたのです。
くどいようですが私には霊感はありません。それでも足元や背中に寒気が走りました。
不気味なものを感じながら自転車に乗り、それからは、もうただひたすら、家に向かって自転車のペダルを踏みました。
帰りの道中は全くの無言。
それ以来、もちろんその池には行っていません。
その事故については、亡くなった学生のご両親が真相解明に動いていると聞きました。
しかしこれを書いている時点では、解決したというニュースはまだ目にしていません。